STORY 構造物ドクター物語

時代の最先端技術の橋を診る

関西のランドマーク橋梁を守る

関西の都市交通の動脈として機能する阪神高速道路には時代の最先端技術を駆使した橋梁が架けられて来ました。
これらの橋梁の健康管理と診断・治療を行ってきたのは私たちエンジニアのプロ集団です。

大橋

港大橋

阪神高速4号湾岸線・16号大阪港線
3径間ゲルバートラス橋 全長980m 1974年完成

港大橋は4車線の車道を上り下りの2階建てとなるダブルデッキ形式の3径間連続ゲルバートラス橋で、
両側のアプローチに2径間連続のトラス橋を従えています。
トラスとは細長い鉄鋼部材を複数の三角形の安定した支持特性を利用して繋いだ骨組み構造のことです。
ゲルバーとは連続した橋桁の支点に蝶番のヒンジを設置し、
応力変位に対応させた構造のことです。

定期点検担当 調査部 福山 修二

定期点検担当 調査部 福山 修二

私たちのあいだでは港大橋は通称「赤い橋」と呼んでいます。
赤い橋はゲルバートラス橋として世界最大級の規模を誇り、鋼材総重量は41,000トンにも及ぶ膨大なボリュームです。アプローチ橋を含め、橋梁全体の複雑な構造すべてを点検・調査するには、5ケ年の期間を要します。
1995年の阪神大震災後、耐震化補強のために新しい免震・制振技術が取り入れられており、建設後30年を超えた橋梁が進化していることが印象的に感じます。
点検・調査において達成感を感じたことは、構造上発見しにくいトラス内面への漏水による腐食損傷が発生しており、これを初期段階で正確に把握し、予防保全に繋がったことです。世界有数の巨大なトラス橋を未来に引き継ぐうえで、安全安心の確保に寄与できたことがとても良かったと思います。そんなときの私たちへのご褒美は、上弦材のテッペンから一望できる大阪の街です。ここに来れる私たちだけの贅沢な絶景は格別です。

東神戸大橋

東神戸大橋

阪神高速5号湾岸線
3径間連続鋼床版斜張橋 全長885m 1994年完成

東神戸大橋は3径間連続鋼床版斜張橋で高さ150mの主塔から斜めに伸びた
多数のケーブルが橋桁を吊っています。
その中央径間長は485mという世界屈指の長さとなります。
上層は下り線、下層は上り線のダブルデッキ構造としての斜張橋は
スマートなフォルムを現し、美しい姿を誇ります。
背景の六甲山脈と調和が図られ、その美しさから神戸市の
景観ポイント賞を受賞しています。

定期点検担当 調査部 谷川 光弘

定期点検担当 調査部 谷川 光弘

東神戸大橋は漏水の影響によるさび腐食が発生し易い箇所が多く、その補修および予防方法を設計チームと協同し考案しました。これにより、経済的で健全性の確保に貢献できるとともに、この橋梁をさび腐食から守る手法を管理者に提案できたことが業務の自信に繋がりました。
こうして、この橋の巨大さに惑わされることなく、確実にひとつひとつの経験を積み上げながら満足のいく業務として完了できたことはとてもやりがいを感じています。
点検中に面白い体験がありました。海上自衛隊の飛行艇が東神戸大橋の架かる海上を通過することがあり、点検現場に直接連絡が入り通り過ぎるまで業務の手を止めて待つことがありました。飛行艇の通行を真上から望むのは不思議な気がしました。

西宮港大橋

西宮港大橋

阪神高速5号湾岸線
バスケットハンドル型ニールセンローゼ桁橋 全長252m 1994年完成

西宮港大橋は、ニールセンローゼ橋形式として日本最大級の規模となります。
アーチ部材はバスケットハンドル型とし優美さと軽快感を表現し、
通行するドライバーから圧迫感を軽減したデザインを採用しています。
そこに、上下3車線づつの6車線を平面に構成しています。
ニールセンとはアーチ部からの吊り材にケーブルを採用している形式、
ローゼとは十分な支持力を持つ大きなアーチ部を持つ形式のことです。

点検調査担当 調査部 堀内 律宏

点検調査担当 調査部 堀内 律宏

アーチ部のトップ付近の点検では上下車線を通行規制して大型の高所作業車を導入します。アーチ部と同時にケーブルの周囲状況を徹底して点検確認を行います。そのため高所作業車のゴンドラを細かく動かす操作が必要とされ慎重な対応が求められます。
アーチ部のボックス内部も点検します。アーチ内部は前後と左右の傾斜が重なり合うため、歩行や点検業務では、まるでミステリーハウスに居るみたいで平衡感覚が狂います。これには慣れが必要です。
西宮港大橋は得意な形状のために、アーチと横支材接続部やケーブルなど応力が複雑にかかり、点検には特に注意を要する箇所がたいへん多くあります。ここで損傷を発見した時に管理者側との連携プレーにより迅速な対応で点検期間中に補修が行なえたことはメンテナンス技術者としても達成感を感じました。このようなスピードと経済性はインフラ構造物の維持管理にとって重要なテーマです。

天保山大橋

天保山大橋

阪神高速5号湾岸線
3径間連続鋼床版斜張橋 全長640m 1984年完成

天保山大橋は大阪港の表玄関となる安治川の河口に架かり、
橋のたもとにはUSJや大観覧車・海遊館など
ウォーターフロントのリゾート空間に位置しています。
通行するドライバーから2基の塔を望めばローマ字のAのデザインとなり、
そこから橋桁の両サイドにケーブルが張られており、
まるでケーブルをくぐって通る楽しい景観が望めます。

定期点検担当 調査部 佐藤 準也

定期点検担当 調査部 今村 敏人

天保山大橋の主塔には昇降用エレベーター、橋桁の下側には検査用移動式台車が設置されるなど大阪港表玄関のランドマーク橋としてメンテナンスの機能性に配慮されています。本橋から東側には大阪港の天保山岸壁が位置しており、クィーンエリザベス号をはじめ大型客船が停泊している時の点検業務ではその優雅な姿と壮大さに癒され得をした気持ちになります。
本橋の利用特性として、すぐ横には天保山出入路が設置されており、大型車両の通行が非常に激しく交通渋滞が頻繁に発生します。その影響と考えられる構造物の疲労に関する損傷が多く認められるため、鋼床版の点検には細心の注意を払っています。
普段の点検・調査業務では、この天保山大橋の損傷の状況を確認し、その記録と報告を行います。場合によってはその点検の機会を利用し応急措置の対策を自分たちで行なう場合もあります。こうしたきめ細かい維持管理を行なうことによって大きく損傷を食い止めることにも繋がります。点検調査から損傷の発見そして初動処置へと円滑に対応できたときはやりがいを感じます。

岸和田橋梁

岸和田橋梁

阪神高速4号湾岸線
中路式バランスドアーチ橋 全長445m 1993年完成

岸和田大橋は岸和田旧港を横断するニールセンローゼ橋です。
アーチ部はバスケットハンドル型とし優美さと軽快観を出すとともに
V字構造の橋脚は安定感を与えています。
橋の全体デザインは地元岸和田のお祭りに因んだ
「だんじり」の屋根をイメージしています。

定期点検担当 調査部 立山 誠之

定期点検担当 調査部 立山 誠之

港の水域の中に点検用の足場を設置したり、また点検期間中においても地元の協力を仰ぎ連携して業務を進めています。前回点検時は耐震化工事と同時期にて点検を実施しているため、点検用足場の設置や点検作業は夜間に行うなど、今までとは違う取組みで業務を完了させています。複合的な現場の対応を柔軟に計画し、無事に完了する事が出来たのは良い経験となりました。
岸和田大橋の正面はショッピングモールや公園が隣接する緑豊かで賑わいのある環境です。この地域の利便性の高い出入路が橋の南側に取付き、地域と共存する橋梁として印象的に感じます。

新猪名川大橋

新猪名川大橋

阪神高速11号池田線
2径間連続プレストレストコンクリート斜張橋 全長400.0m 1998年完成

池田市と川西市の間を流れる猪名川に斜めにかかる新猪名川大橋は
2径間連続プレストレストコンクリート斜張橋です。
このタイプの橋梁ではわが国最大規模となります。
コンクリートの主塔から橋桁に張られた56本のケーブルが
「ハープの弦」のように見えるので、「ビッグハープ」の愛称でも親しまれています。
平成9年度 土木学会田中賞,PC技術協会賞(作品部門)

定期点検担当 調査部 伊藤 全次郎

定期点検担当 調査部 伊藤 全次郎

コンクリート製の主塔は箱形式でその中は空洞となっています。その内部にケーブルの定着部があり、点検・調査の重要なポイントとなります。コンクリートの特性として、補修の難易度への対応から、点検時には高度な技術力が求められます。そのため業務にあたっては、予めケーブル張力測定結果と損傷履歴などを確認しておき、現場の点検状況と照し合せ微細な変化を見逃さないようにしています。

私たちの点検・調査が実際の補修に活かされた際には満足感が得られました。
新猪名川大橋は、地元に昔から伝わる「龍の伝説」に因み、橋梁デザインを「龍」のイメージで表現しています。そのため川西市のホームページにも町のシンボルとして紹介されるなど地元に愛されている橋梁だと感じます。

大滝

大滝橋

阪神高速7号北神戸線
鉄筋コンクリート固定アーチ橋 全長東行き 186.1m 西行き174.0m 1985年完成

大滝橋は、神戸市の公園施設「しあわせの村」の敷地内に位置し、
その周辺地形はおわん状の谷間で、両側は急斜面となっています。
谷間部のほぼ中央には水路があり、すぐ下流には落差7mの滝があります。
大滝橋はそこから名づけられています。
それら周辺環境との調和と地形に即した美的要素を考慮して、中間に橋脚を持たないで谷間を渡し、
安定感のある構造形式のコンクリートアーチ橋が採用されています。

定期点検担当 調査部 桑原 大

定期点検担当 調査部 桑原 大

コ大滝橋はアーチを巨大なコンクリートの塊として形成している形態が圧倒的な印象です。
北神戸線山岳部にある谷間の橋梁であるため、高架下の地上から高所作業車使用による接近は限られた範囲となります。アーチ部の高速道路上から橋梁点検車により点検・調査をします。

この橋梁地域は神戸層群と称し、凝灰岩、砂質凝灰岩が厚く分布しています。これは地山の変位等の状況変化にも気を配る等、損傷と併せ複合的に判断を要する部分となります。また地山の斜面を登るなど安全面にも幅広く対応を求めらることから、全体の報告が完了したときには大きな達成感がありました。